vol.3

1_原点は谷川レシピ – 瀬川しのぶさん

2023.10.11.

第3回目のゲストは谷川醸造のレシピを考案していただいている、フードコーディネーターの瀬川しのぶさんです。元々は会社員として、料理とは無縁の世界で 働いていた瀬川さん。料理の世界へ進むきっかけやこれからやってみたいことなど、色々とお聞きしました。全3回でお送りします。


およね
今日はお願いします。
瀬川
お願いします。
およね
瀬川さんにレシピをお願いするようになってもう7年くらいの付き合いになるけど、経歴ってあまり聞いたことなかったね。どこ生まれ、どこ育ち、とか。
瀬川
両親はどちらも能登出身だけど、生まれは東京。父の仕事の関係で、子どもの頃は東京に住んでいました。
谷川醸造のショップにて。レシピ撮影もここでしています
およね
そうだったんだ。いつから輪島に?
瀬川
小学校低学年くらいかな。
輪島の方言がちょっと強めだから最初はずっと怒られていたような感覚だった(笑)
およね
訛りがキツく感じたのかな(笑)
中学では、うちの社長(おたかさん)とも同級生だったんだよね。
瀬川
社長とその頃は話したことはなかったけど谷川醸造の蔵にお手伝いに来たことがあって。
わたしの父が醤油造りを担当していたので。(※)
※瀬川さんの父は約30年前まで谷川醸造の工場長として醤油や味噌造りを担当
およね
そうなんだよね。研究熱心な職人さんで、うちもとても頼りにしていたと聞いているよ。瀬川家とは何かとご縁がある。
瀬川
父がここで働いていた時は、家で色々な醤油の味見をした記憶もあるし、仕込みで夜遅く帰って来ると、醤油の蒸れた、大豆を蒸したような匂いがして。
一緒に洗濯しないで!とか、いま思えばひどいことを言ってたな(笑)
およね
疲れて帰ってきているのに(笑)
それだけ谷川の醤油が身近だったんだね。
瀬川
だから千穂ちゃんからお仕事をいただいた時は、目に見えないご縁を感じたよ。
瀬川さんが今まで監修したレシピは約100種類

現在、フードコーディネーターとして能登を中心に活動している瀬川さん。様々な経験を積みながら、本格的に料理の世界に飛び込んでいきます。

およね
昔から料理は好きだったの?
瀬川
うん、すごく好きだった。
瀬川家では父がご飯を作っていて、お寿司とか、家でなんでも作ってくれた。
彼氏が出来た時も、父にお弁当の作り方を教えてもらいました(笑)
およね
お父さんとしては複雑だね(笑)
瀬川
うん、嫌だったと思うよ(笑)
およね
じゃあ、高校を卒業してからは?
瀬川
県内の短大に進学して、経営科で情報処理を学びました。
およね
最初から料理の道に進んだわけではないんだね。
瀬川
そうそう。
就職は、上京したいっていうのもあって、東京の印刷会社に勤めたし。
およね
え!じゃあ料理はいつ出て来るの?
瀬川
まだまだ出てこない(笑)
料理は好きだけど、仕事にしようとは思っていなくて。
そこの会社が開発しているソフトがあったんだけど、そのソフトを印刷会社に売って、使い方を教えるっていうトレーナーをしていた。
瀬川
そのあとは石川に戻って、金沢の印刷会社でDTPオペレーター(※)として学術文書や美術本のレイアウトをする仕事に就いたよ。
※DTPオペレーター・・・パソコンで印刷用のデータを作成・編集・加工する仕事
およね
印刷業界が長かったんだね。
瀬川
わりと好きな仕事だったから。印刷業界にはトータル10年くらいいたかな。そのうち働きながら「ABCクッキングスタジオ」に通い始めた。「料理教室に通うOL」に憧れて(笑)
およね
やっと料理の話がでてきた(笑)
瀬川
その料理教室をきっかけに、金沢のイタリアンとか、フレンチのお店がやっている料理教室にも行くようになって。
土日の休みと、平日の夜をフル活用してね。
およね
色々なジャンルの料理教室に通ったんだね。
瀬川
そうそう。お料理好きな人たちが集まって来るから、皆さんとお話をするのがすごく楽しくて。
そのうちイタリアンの先生に、「ここでバイトしない?」って言われて、ディナーのバイトも始めたり。
およね
日中の仕事もしながら夜も働くのはハードじゃなかった?
瀬川
毎日ではなかったし、いろんな知識を得られるからすごく楽しかったよ。

料理教室に通ううちに「自分も教える側になりたい」と、就職試験を受け30歳の時に「ABCクッキングスタジオ」の先生になった瀬川さん。およねさんから、レシピ開発の仕事も舞い込みます。

およね
どうして料理教室の先生になろうと思ったの?
瀬川
生徒として通っている時に、先生が一人分の材料を色々用意してくれるのね。でも私、そこがしたいなと思って。そこが大事だよと思って(笑)
いい材料を揃えるとか、どういう風に準備しておいたら生徒さんが切りやすくなるかとか、そちら側に立たないと料理が上手にならないと思ったの。
およね
先生の仕事はどうだった?
瀬川
一回の授業に料理とケーキとパン、3種類のメニューがあるんだけど、月ごとにも変わるし、生徒さんのレベルに合わせたりとか、一つの授業に生徒さんが5人いて、2時間で終わらせないといけないとか結構ハードで(笑)
およね
そういうスクールって、基礎的な料理も、凝った料理もするよね。初心者からベテランまで対応っていうか。幅広く自分のスキルが上がりそう。
瀬川
先生のレベルも問われるし、技量もそうだし、家でも相当練習したね。
ABCでは確実に鍛えられた。
およね
私がレシピを頼んだのも、料理教室の先生だから、というのが大きかったよ。
料理上手な人は周りにもいたけど、レシピにおこすのはまた別の技量がいるみたいで。
瀬川
私のことは最初、社長から聞いたの?
およね
そう、社長から、同級生でこういう人がいるよと聞いて。うちの調味料を使ったレシピがあるといいなと思っていたから、作ってくれる人を探していて。
瀬川さんが谷川醸造のお仕事で最初に作った豚どんぶり。
当時を思い出しながら作ってもらいました

—— およねさんから発注があった時はどう思いましたか?

瀬川
え、出来ない!と思った。
およね
まさかそんな風に思われていたとは(笑)

 

—— どんなレシピを依頼されたんですか?

瀬川
谷川さんの調味料を使った料理で、手に入りやすい材料と分かりやすい手順で作れるもの、というオーダーでした。
およね
基本的に材料を切って調味料を入れるとか、材料に少し下味つけるとか、簡単で親しみのあるメニューが多いよね。
瀬川さんが個人で受けた初めてのお仕事。9品の料理が掲載されています
およね
最初にお願いした時、動画の方が分かりやすいという話になってレシピ動画も撮ったんだよね。
瀬川
そうだったね。
およね
金沢のレンタルスタジオを借りて瀬川さんに来てもらって。
そしたら当日、緊張しすぎて眠れなくて、じんましん出ましたって言われて(笑)
瀬川
そう!だから動画を見たら、私にしかわからないけどブツブツの手でやっている(笑)
およね
なんでそこまで緊張したの?
瀬川
今まで生徒に料理をしてもらう立場だったから、自分がイチから料理するところを見せるという経験がなくて。
そこにデザイナーさん、カメラマンさん、クライアントさん(およねさん)がいて。個人としての初めての仕事だったのもあって、すごく不安になったの。
およね
確かにその時はまだ料理教室に勤めていて、そういう仕事は初めてだったもんね。そこから私、もう普通に色々と頼んでいるよね(笑)
瀬川
千穂ちゃんからレシピを作る仕事を頼まれた時に、あ、こういう仕事があるんだなって事が分かって。
レシピ本とか見ているから分かっていたはずなんだけど(笑)自分がいざ頼まれてやっと自覚できたというか。
調べたら「フードコーディネーター」という職種ということが分かって、やりたいかも!と思って(笑)
およね
そこから料理教室に勤めながら、個人でも少しずつ活動していったんだね。
瀬川
千穂ちゃんにもらったレシピの仕事が、いまの仕事を始めるきっかけになっているよ。

次回は能登にUターンしてからフードコーディネーターとして独立するまでをお伺いします!

谷川千穂
(愛称:およね)

金沢から輪島に嫁いだ谷川醸造4代目の嫁。広報の仕事がメイン。

瀬川しのぶ
(セガワレシピ)

能登を中心に活動するフードコーディネーター。谷川醸造の調理料を使ったレシピを監修。

writer&進行:堂下真紀子 photographer:松田咲香


瀬川さん監修のレシピはこちらから!

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