vol.3

2_能登でのおしごと – 瀬川しのぶさん

2023.11.02.

第3回目のゲストは谷川醸造のレシピを考案していただいている、フードコーディネーターの瀬川しのぶさんです。元々は会社員として、料理とは無縁の世界で 働いていた瀬川さん。料理の世界へ進むきっかけやこれからやってみたいことなど、色々とお聞きしました。全3回でお送りします。


およね
能登にUターンしたのは何年前?
瀬川
5年前かな。
およね
きっかけは何かあったの?
瀬川
理由は一つではないんだけど、離婚したタイミングだったり、能登の郷土料理をもっと勉強したいと思ったりしたことが大きかったかな。
およね
そのまま金沢で働き続ける選択肢もあったと思うけど、よく決断したよね。
瀬川
ABCクッキングスタジオを10年続けて、キラキラした可愛い料理は作れるようにはなったけど、自分の故郷の料理は何も知らないと思って。
それで能登に帰る選択肢が出てきた。
およね
能登に戻ってからはどうしていたの?
瀬川
能登町の「イカの駅つくモール」がオープンするというのでスタッフ募集があって、そこで物販の担当として働くことになったの。
能登の商品を知れば、自分の仕事にも繋がるかもと思って。
およね
それでイカの駅で働くようになったんだね。立ち上げから関わっていたの?
瀬川
そうだね。自分に与えられたミッションとして「能登の物産品を集めて売る」というのがあって。
全然知らない業者さんところに行って、「イカの駅というのができまして・・・」という話から(笑)
能登の業者をピックアップして100件ほど営業に行ったよ。
およね
100件!それは自分で見つけて?
瀬川
「能登 食品」で検索して、 ひたすら調べてアポをとって。
あの時はみんな「イカの駅?何それ?」という 感じだったから大変だった(笑)
およね
そんな大変なところからやっていたんだね。でも人脈は広がりそう。
瀬川
そうだね。
業者さんが持ってくる商品を見て、これにレシピが付いていたらいいのになとか盛り付けの写真があればもっと売れるのになと思って。
「盛り付けして撮りましょうか?」みたいな感じで提案するうちに色々な業者さんとも仲良くなってそこからお仕事をいただけたり。
およね
個人の仕事にも繋がっていったんだね。
瀬川
そこは副業OKなところだったから、ありがたかった。
個人の仕事がある時はお休みを取らせてもらっていたから。
今でこそ副業って浸透してきたけど、田舎ではまだまだ難しい部分もあるし。
およね
イカの駅はどれぐらい勤めていたの?
瀬川
2年半かな。
そろそろ私も独立して頑張ろうかなと思いはじめて。
およね
独立って勇気がいると思うけど、やっていけるという確信はあったの?
瀬川
確信より「やってみたい」気持ちだけ(笑)
やってみないと何も分からないし、やってみて「ああ〜失敗したな」ということももちろんあるんだけど(笑)
瀬川
それで去年の4月に開業届けを出して、正式に個人事業主になりました。
インスタでちっちゃく告知してね(笑)
およね
フリーのフードコーディネーターとしてやってみてどう?
瀬川
今思えば、谷川醸造さんで仕事させてもらったのが大きかった。
初めてのクライアントさんには、目に見える実績として谷川さんのHPや動画を紹介することが出来たし。
そのおかげで「日本醗酵化成株式会社」さん(焼酎の製造・販売)や「ひらみゆき農園」さん(ブルーベリー栽培・販売)からお仕事をもらえたので。
およね
大変な仕事もたくさんお願いしたけど、お役に立てたなら良かった(笑)
瀬川
そんな、とんでもない(笑)
およね
去年はひらみゆき農園さんのクレープの開発もしていたね。
瀬川
平さん(ひらみゆき農園代表)が、ブルーベリーの生産だけだと先がないという話をされていて、それを踏まえた上で相談があって、2人で考えて。
ブルーベリー=デザートはイメージしやすいし、クレープって一番分かりやすくて誰でも食べられるものだよね、と。
およね
キッチンカーでの販売も手伝ったりと、去年は特に忙しそうだったね。
瀬川
もう、がむしゃらだった(笑)
およね
でも、ほかに能登でそういう仕事をしている人があまりいないから、やりがいもありそう。
瀬川
能登はものづくりに真剣に取り組んでいる人、特に食に関してはすごく多い。
ただ、作ることに集中しすぎて見せ方が分からないという声が多いから、それをレシピにして写真で提案した時に「こんなの欲しかった」とか「これを見てお客さんが喜んで買ってくれた」という声を聞くとやりがいを感じるよ。
およね
お客さんが苦手なところを解決してあげるというか。
瀬川
そうそう。商品が売れる橋渡しができた時が一番うれしい。

「能登のフードコーディネーター」として知られるようになってきた瀬川さん。忙しい中でもインプットは欠かせません。瀬川流レシピの作り方をお聞きしました。

およね
レシピのアイデアはいつどうやって生まれているの?
瀬川
改まってアイデアを練ることは少ないかも。
食事に行った時に、これってどういう味付けだろうって考えたり。
この調味料を使えば、料理屋さんみたいに出汁を取ってなくても家庭で簡単にできるんじゃないかなとか。勉強も兼ねて外に食べに出ることは多い。
およね
直接、お店の人に聞いたりもする?
瀬川
聞いたりするよ。料理のことは何も知りませんみたいな顔してね(笑)
およね
(笑)
およね
料理が好きだからこそ、食べながら色々と思うんだろうね。
私はひたすら美味しいって食べるだけ。
こういうものを使えばおうちでも作れそうとか、まったく思わないかな(笑)
瀬川
普通はそうなのかもしれないね。
およね
私はてっきり、家にこもってレシピを考えていたりするのかなと思っていた。思いついたレシピは書き溜めていたりするの?
瀬川
うん。全部残してあるよ。
レシピって前のものと被ったらダメじゃない?
谷川さんのレシピは100個くらいあるから。被ったら「ちょっと被り気味だぞ、おまえ!」みたいに自分で突っ込みながら書いて見直して、みたいな(笑)
およね
外食して浮かんだアイデアは頭の中に入れておくの?それともすぐメモするの?
瀬川
写真で撮ることが多いかな。見返すと記憶が蘇りやすいから。
店の人に怪しいと思われるからメモはしない(笑)
あとは記憶のあるうちに自分で作ってみたりするよ。食べた味を再現してみたり。
およね
再現できるものなの?
瀬川
できるときもあるけどできない時もある。
そこはやっぱりプロだなって。でもその料理の一部でも家庭料理で楽しめる何かがあれば、織り交ぜてレシピに入れたりできるかなって。
料理にはいろんなカテゴリがあるけど、私はあくまでも家庭料理の範囲でやりたいから。
およね
自分のお店を持ちたいとは思わないの?
瀬川
「このお店やりませんか」という話も来る。
でも私はそこは全然目指してなくて。イカの駅で能登の業者さんに携わったことが大きいんだけど、そういう人たちのサポートがしたい。
どちらかというと、私はサブというか“黒子”でいたい。
およね
じゃあ今の仕事は自分のやりたい方向性に合っているんだね。
瀬川
最近合ってきた。
なんか偉そうだけど(笑)
だんだんキタ〜!と思ってる(笑)
およね
(笑)
やっていくうちに分かることもあるもんね。
瀬川
そうだね。ちょっとずつ自分の思い描くスタイルに近づいているよ。
道具を渡して、むちゃぶりにも応えてくれました(笑)

次回は、瀬川さんのライフワーク、能登の郷土料理についてお伺いします!

谷川千穂
(愛称:およね)

金沢から輪島に嫁いだ谷川醸造4代目の嫁。広報の仕事がメイン。

瀬川しのぶ
(セガワレシピ)

能登を中心に活動するフードコーディネーター。谷川醸造の調理料を使ったレシピを監修。

writer&進行:堂下真紀子 photographer:松田咲香


瀬川さん監修のレシピはこちらから!

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